AI Innovators Circle 第6回 イベントレポート
AIと一緒に働くワクワクを、どう社内に広げるか。トヨタコネクテッドの実践から見えてきたもの
※このレポートは音声データを元にAIエージェントがライティングを行っております。
AIの「景色」は、触れているかどうかで決まる
2026年4月20日。シンセシー株式会社が主催する「AI Innovators Circle」の第6回が開催されました。
CAIO/CDOの馬淵さんがモデレーター兼登壇者として場をリードし、ゲストにはトヨタコネクテッド株式会社でAIトランスフォーメーションを担当する川村翔太さん(愛称:ショーティー)を迎えたトークセッションです。テーマは「AI導入で終わらせない。企業変革を前に進める実践」。
会場には、AI活用・推進に関わるビジネスパーソンが集まりました。冒頭、馬淵さんが「Claude Codeを使っている方?」と問いかけると、手を挙げたのはほんの数名。国内の大企業を中心とした参加者構成を考えれば、その「少なさ」こそが、日本の大企業におけるAI活用の現在地を正直に映していました。馬淵さんは挙手した数名に向けて「この辺はさすがですね」と一言添えながら、その温度差をそのままセッションの出発点に据えました。
馬淵さんが語ったのは、こんな一言でした。
「この2〜3ヶ月でAIの景色が激変しました。Claude Code、Claude Designの登場で、対話型AIとエージェンティックAIで見えている世界がまるで違います。触っているか触っていないかが、今の議論の分岐点になっています」
FigmaはClaude Designの登場だけで株価が8%下落しました。AIは「便利なツール」ではなく、産業の地図を書き換える力を持ち始めています。スマホから指示を出すとPCのエージェントが動く、そんな日常がすでに始まっています。
入社して気づいた「AI以前の問題」
川村さんがトヨタコネクテッドに入社したのは2023年11月。前職ではUXデザインとプロダクト設計に携わっていました。入社から半年も経たない2024年4月、AI統括部を立ち上げ、トヨタグループ全体のAI推進をリードする立場に就きました。
しかし、最初の衝撃はAIよりもっと手前にありました。
「入社して驚いたのが、クラウドにファイルをアップロードできない人がいたことです。AI以前に、デジタルリテラシーそのものに課題がある。まずそこから始めなければいけないと悟りました」
大企業でAI推進を担うということは、技術の話だけではありません。人の話であり、組織の話であり、文化の話です。その現実を正面から受け止めるところから、川村さんの実践は始まっていました。
全社研修の「反省」と、逆メンターという逆転発想
1年目、AI統括部は全社員を対象にした研修を実施しました。しかし、振り返ってみると「反省が多い」と川村さんは語ります。
「全員に平等に届けようとしすぎました。できる人に集中投資すべきだったと、今なら思います」
そこから生まれたのが「AIアンバサダー制度」です。社内から80〜90名を選抜し、稼働費はAI統括部が持ちます。彼らが現場に帰って伝道師になる仕組みをつくりました。
さらに印象的だったのが「AI逆メンター制度」の話です。若手社員が役員にAIを教える、という試みです。最初は「役員が素直に聞くのか?」という疑問もありましたが、蓋を開ければ逆でした。
「役員のみなさんが、自発的に『早く使わせてくれ』と言い始めたんです。立場関係なく、本物の熱量が生まれた瞬間でした」
「タイガーチーム」と、危機感の正しい設計
推進の方法論として紹介されたのが「タイガーチーム」です。AI統括部が要件定義から開発まで一気通貫で担い、従来数ヶ月かかっていたプロセスを1〜2ヶ月に短縮する取り組みです。
AIトランスフォーメーションを体系化した「6P」フレームワーク(戦略・ガバナンス・ガイドライン・ツール・人材・カルチャー・プラットフォーム・POC・ブランディング)も紹介され、推進の構造が鮮明に見えました。
そして、この日のセッションで最も示唆に富んでいたのが「危機感の作り方」についての話だったかもしれません。
「社内で危機感を煽っても、どこか他人事になります。だから、社外からの圧を設計することにしました」
AI統括部の中にブランディングチームを設置したのはそのためです。社外に情報発信し、メディアに取り上げられ、外から「すごい会社」と評価されることで、社内が動き始めます。危機感は内から生むのではなく、外から照射する。その逆転の発想が、組織変革の実効性を高めていました。
Claude Codeで、セキュリティチームから緊急連絡が来た話
会場の空気が一気に和んだのが、このエピソードでした。
川村さんがClaude Codeを社内で使い始めたとき、セキュリティチームから緊急連絡が入ったといいます。Claude Codeがさまざまなタスクを自動化しようとした際、Macのキーチェーン(パスワード管理機能)に何度もアクセスを試みたのです。実際にはセキュリティ保護により情報の取得には至りませんでしたが、その繰り返しのアクセス試行がアラートとしてセキュリティチームに飛んでしまいました。悪意があったわけではなく、AIエージェントが自律的に動いた結果です。それでも、
「『LANケーブルを抜いてください』って(笑)。それくらい、現場の反応は素直なんです。だからこそ、ガバナンスやガイドラインの整備が推進と並走しなければいけない」
笑いを誘いながらも、この話は本質を突いています。AIの推進は、解禁だけでは成立しません。信頼の設計と同時進行で進む必要があります。
また、AIツールの活用に関しては興味深いデータも語られました。2つまでは生産性が上がります。しかし3つ目から「AI疲れ」が発生します。導入さえすれば良いという発想が、いかに危ういかを端的に示すエピソードでした。
「ヒューマン・イン・ザ・ループ」から「オン・ザ・ループ」へ
セッションの後半、馬淵さんは人間とAIの関係性の変化についても語りました。
かつては「ヒューマン・イン・ザ・ループ」、つまり人間がAIのプロセスの中にいる設計が標準でした。しかしエージェンティックAIの時代、人間は「ヒューマン・オン・ザ・ループ」に移行しつつあります。AIが自律的に動き、人間はその上位から監督する立場へ。NVIDIAも同様の図解でこの変化を示しており、馬淵さんはその意味を会場に向けて丁寧に解説しました。
プライベートでもAIエージェントを常時活用し、子ども向けのAIワークショップも実施している川村さんにとって、AIとの共働きはすでに「日常」です。その日常を、いかに組織に広げていくか。それがこの日のセッション全体を貫くテーマでした。
締めくくりに川村さんはこう語りました。
「AIと一緒に働くワクワクを、社内のメンバーと一緒に感じたい。それが、私がこの仕事をしている一番の理由です」
クローズドだからこそ生まれる、リアルな課題共有の場
セッション後半は、ドリンクやフードを楽しみながらの交流会・質疑応答タイムへ。具体的な導入方法や各企業が抱えているリアルな課題など、クローズドなセミナーならではの深い対話が活発に交わされました。
「自社ではどこから手をつければいいのか」「現場の抵抗感をどう乗り越えるか」——そんな踏み込んだ相談が、講師や参加企業の間で自然に生まれる。完全クローズドな場だからこそ、それぞれが本音で課題を話せる環境が整っており、このコミュニティとしての側面も、AI Innovators Circleが持つ大きな価値のひとつです。
次回のAI Innovators Circleへ
シンセシー株式会社(Synthesy)は、CAIO(Chief AI Officer)を経営の核に据え、AIドリブンな組織運営を実践している会社です。AI Innovators Circleはその思想の体現でもあります。「最先端の現場で何が起きているか」を、当事者の言葉で届ける場として、定期的に開催されています。
今回のセッションが証明したのは、AIの導入は「ツールの話」ではないということです。組織の文化、人材の育て方、危機感の設計、ガバナンスの構築——すべてが絡み合って、はじめて変革は動き始めます。
次回のAI Innovators Circleも、また違う現場の「実践知」が持ち込まれるはずです。
AIの景色が変わるスピードに追いつくために。そして、ただ追いつくのではなく、その変化を自分たちの武器にするために。
次回の開催情報はシンセシー株式会社(Synthesy)の公式サイトをご確認ください。
主催:シンセシー株式会社 /