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AI Innovators Circleメディア

AI Innovators Circle 第7回|AI導入企業の88%が直面する「成果の壁」①

※このレポートは音声データを元にAIエージェントがライティングを行っております。

「Computer by DevRev」が示した企業AIの次の形――PoC止まりをリブートする

2026年5月28日、シンセシー株式会社が主催する「AI Innovators Circle」第7回が、日本橋のSynthesyオフィス「フリースペースX」で開催された。

今回のテーマは「AI導入のPoC止まりをリブートする」。生成AIのPoC(Proof of Concept:概念実証)には着手したものの、その先の本番運用や全社展開へ進めない。多くの日本企業が直面するこの壁を、どのように乗り越えるのかが、イベント全体を貫く問いとなった。

米国から来日したDevRevのCorporate Vice President、Michael Machado氏をはじめ、DevRev Japanの町田栄作氏、クラスメソッド株式会社の武田信夫氏、一般社団法人沖縄オープンラボラトリの山崎里仁氏らが登壇。会場にはAI導入を検討中、またはPoCを進めている企業の担当者約30名が集まった。

冒頭、Synthesyの松崎から投げかけられたのは、シンプルでありながら核心を突く問いだった。

「AI PoC止まり、これをどう打破するか」

この問いを起点に、AIを個人の便利な道具から、企業の業務基盤へ変えるための条件が議論された。


3年間のステルス期間を経て、日本市場へ

最初に登壇したのは、DevRev Japanの町田栄作氏である。

DevRevは2020年、米国シリコンバレーのパロアルトで創業した。創業者は、サーバーやストレージ、ネットワークなどを統合するハイパーコンバージド・インフラストラクチャーの分野で企業を立ち上げた経験を持つ。

DevRevでは、その統合思想をソフトウェアと業務データの領域へ広げ、「ソフトウェアレイヤーにおけるハイパーコンバージェンス」の実現を目指しているという。

創業後の約3年間は、対外的な情報発信を抑え、製品開発に集中するステルス期間を設けた。

「最初の3年間はずっとステルスで、表に出ないで、我々はしっかりとものづくりをやらせていただいて」

町田氏によると、現在は世界8拠点、約800名規模へ成長。2025年10月にはDevRev Japanとして日本市場へ正式に進出し、国内の複数企業ですでに利用が始まっているという。

町田氏は、日本企業がAI導入で直面する課題を4点に整理した。

第一は、データの分散である。企業内の情報は、CRM、メール、クラウドストレージ、問い合わせ管理システムなどに点在している。AIで活用するには、単に一か所へ集めるだけではなく、情報の意味や関係性を維持したまま利用できる状態へ整える必要がある。

第二は、AIのリスク管理だ。ハルシネーションへの対策に加え、誰がどの情報へアクセスできるのか、AIにどこまで操作を許可するのかといった権限設計、監査、ガードレールが欠かせない。

第三は、人材不足である。労働人口が減少する中、定型業務を自動化し、人が判断や顧客対応など、より付加価値の高い業務へ集中できる環境が求められる。

第四は、ベンダーロックインからの脱却だ。特定のプラットフォームだけにデータや業務を閉じ込めず、複数のシステムを横断できるエコシステムが必要になる。

町田氏は、これらの課題に対するDevRevの考え方を紹介する人物として、Michael Machado氏へキーノートのバトンを渡した。


Keynote:「Computer by DevRev」とPost-Claudeの世界

Michael Machado氏は、DevRevのCorporate Vice Presidentとして、プロダクトとブランドを担当する。DevRevには創業期から約5年間在籍。それ以前には、後にSalesforceへ買収されたAI企業MetaMindでプロダクト組織を率い、日本市場とのパートナーシップにも関わってきた。

“How do we all bring AI to the workplace?”

「AIを、どのように職場へ持ち込むのか」

Machado氏は、この問いをキーノートの出発点とした。

最初に披露されたのは、DevRevのプロダクト「Computer」のライブデモである。Machado氏が来場者の一人と対話しながら、プレゼンテーションの内容をその場で構成し、修正していく様子が実演された。

一度の指示で完成品を受け取るのではなく、人間とAIが対話を重ねながら成果物を磨く。AIを単なる生成ツールではなく、チームの一員として活用する姿を示すデモだった。

英語で作られたプレゼンテーションは、その場で日本語へ翻訳された。言語の違いを越え、チームが同じ情報を共有できることも、Computerが目指す体験の一つとして紹介された。


「スピード」だけでなく「クラリティ」が必要

Machado氏のプレゼンテーションで繰り返し登場したのが、「スピード」と「クラリティ」という言葉である。

「私たちが信じているのは、この速さというのは単なるスピードではない。組織における真の速度とは何か。ここでクラリティ、明確さというのが非常に重要になります」

AIによって個々の作業が速くなっても、組織として目指す方向や役割が共有されていなければ、成果にはつながらない。むしろ、各部門が異なる方向へ高速で動けば、手戻りや確認作業が増える可能性もある。

この考え方を説明するため、Machado氏は2015年ラグビーワールドカップの日本対南アフリカ戦と、箱根駅伝を例に挙げた。

いずれも、一人の突出した能力だけではなく、チームが戦略と役割を共有し、次の人へ確実に仕事をつなぐことで結果を生んだ事例である。

「襷のように、AIと人間、人間同士が助け合っていく力を、日本から学ぶことができると思っております」

この思想を基盤として紹介されたのが、DevRevの掲げる「チームインテリジェンス」だ。

「ChatGPTやClaudeのように一人ひとりが個別に使うところから、複数の人間がAIを使っていく環境へと変わっていきます」

現在の生成AI活用は、個人がAIへ質問し、回答を得るシングルプレイヤー型が中心である。しかし、企業が本格的にAIを活用するには、複数の人間とAIが同じデータや文脈を共有する、マルチプレイヤー型へ移る必要がある。

Machado氏は、企業AIに必要な評価軸として、精度(Precision)、効率性(Efficiency)、安全性(Safety)の3点を挙げた。正しい情報に基づいて適切な行動を取り、同時に情報探索や確認作業などの組織的なオーバーヘッドを減らすことが重要だという。


データを集約せず、関係性をつなぐ

技術的な核心として説明されたのが、ナレッジグラフを中心としたデータ構造である。

企業内には、顧客情報、製品情報、問い合わせ、会議記録、メール、文書など、膨大なデータが存在する。これらをすべてLLMのコンテキストへ投入すれば、処理するトークン量とコストは急増する。

Machado氏は、DevRevでは必要な情報へ至る経路を絞り込み、関係のないデータを処理対象から外すことで、トークン量を大幅に削減できると説明した。当日紹介された削減率やコスト効果は、DevRev側の試算・説明に基づくものである。

ナレッジグラフでは、顧客、製品、チケット、担当者、文書などを、単独のデータとして扱うだけでなく、相互の関係性まで構造化する。

例えば、「この顧客が利用している製品」「その製品に関連する未解決チケット」「担当する営業」「関連する会議記録」といった経路をたどることができる。

重要なのは、すべてのデータを一か所へコピーすることを前提としていない点だ。

「データをすべて企業の中から一つのところに集めるということではありません。さまざまな形でデータを検索し、アプリで使えるようにして、それをリアルタイムで行っています」

巨大なデータ基盤を新たにつくるのではなく、必要なときに元システムの情報を参照し、関係性に基づいてAIが利用する。これによって、データの鮮度や出典を保ちながら、検索範囲を限定するという考え方だ。


データ統合の目的は、フィードバックループを回すこと

Machado氏は、データを接続するだけでは組織の変革には不十分だと説明した。

重要なのは、顧客や現場から得られた情報を行動や改善へつなげ、その結果を再び顧客へ返すフィードバックループである。

エンジニアリング部門では、問い合わせやサポートチケットから不具合や改善要望を特定し、製品や機能と関連付けて開発へ渡す。

営業部門では、顧客の利用状況や問い合わせ履歴をもとに、次に取るべき行動やミーティングの必要性を判断する。

IT部門では、社内文書や過去の対応履歴を参照するAIサポートを構築し、担当者が複雑な問題へ集中できる環境をつくる。

DevRevはMicrosoftやSalesforceなどの既存プラットフォームとも連携する。それぞれのサービスは、自社内のデータ活用には強い一方、他のシステムを横断するには追加の統合が必要となる。DevRevは、その間をつなぐ役割を担うと説明された。


「Claudeを使えばよい」だけでは足りない

会場の注目を集めたのが、一般的なAIモデルとComputerを比較するデモだった。

「トップ10の顧客のうち、現在も未解決となっているチケットは何か」という同じ趣旨の質問を両者へ入力したところ、一般的なAIでは関連情報が十分に整理されないまま多数の結果が返された。一方、Computerは顧客、チケット、対応状況の関係性をたどり、条件に合う未解決チケットを絞り込んだ。

このデモが示したのは、基盤モデルの性能だけでは、企業固有の質問に正確に答えることが難しいという点だ。

高性能なモデルを企業データへ接続すれば、直ちに業務エージェントが完成するわけではない。AIが参照できるデータ、実行できる操作、人間の承認を必要とする条件を設計する必要がある。

DevRevは、基盤モデルと企業固有の業務・データとの間にあるギャップを埋める「エージェンティックシステム」として位置付けられた。


AIを任せられる範囲は、止め方で決まる

AIエージェントが自律的に動くほど、企業が懸念するのが暴走とブラックボックス化である。

Machado氏は、安全設計として、権限管理、処理履歴の記録、監査ログ、アンドゥー、ロールバック、ストップ機能を紹介した。

「過去のエージェントが作業したログを遡って、必要な時点からアンドゥーすることもあります。止めてくれと言えば必ず止まり、前の状態まで戻すロールバックが可能です」

AIに業務を任せるだけでなく、どのように監視し、停止し、誤りを修正するのか。企業利用では、能力の高さと同じくらい、制御可能性が重要になる。

また、Computerは導入初日から組織のすべてを理解した完成品ではなく、日々の利用を通じて業務や行動を学ぶと説明された。

“Every day that you use Computer, it gets better and better through tight feedback loops.”

使い続けるほど、組織固有の業務へ適応する。この思想は、後のパネルディスカッションで語られた「使えば使うほど賢くなるビジネスフレームワーク」という表現にもつながった。


日本を市場ではなく、パートナーとして捉える

キーノートの最後に、Machado氏は日本市場への姿勢を語った。

日本を単なる販売対象ではなく、高度な企業活動と豊富な業務データを持つ長期的なパートナーとして位置付けているという。

また、日本国内でデータセンターの展開を進め、主要な機能やデータ処理を国内で完結させる体制を計画していると説明した。提供時期や対象機能などは、今後の正式な案内を確認する必要がある。

日本企業にとって、データの保管場所、越境移転、業界規制、コンプライアンスは本番導入の重要な条件になる。国内運用への対応は、DevRevの日本展開における主要方針として示された。


DevelopmentとRevenueをつなぐ

キーノートを受けて、松崎がDevRevという社名について説明した。

「DevRevは、Developということと、RevはRevenueということだと思います」

企業では、開発、マーケティング、営業、サポートが別々の部門やシステムで管理されがちである。しかし、顧客から寄せられた問い合わせや要望は、本来、製品開発や営業戦略へ戻されるべき情報だ。

製品を開発し、市場へ届け、顧客を獲得する。問い合わせへ対応し、その声を製品へフィードバックし、顧客価値と収益の向上につなげる。

DevRevという名称には、DevelopmentとRevenueの間にあるサイクルを接続し、継続的なフィードバックループとして回す思想が込められている。

キーノートは単なる製品紹介ではなく、AIを個人のツールから組織の基盤へ変えるために必要な、データ、制御、共有知の設計を示す内容となった。


中編・後編へ

高度な基盤や製品が存在するだけで、日本企業のAI導入が自動的に進むわけではない。

責任の所在、投資対効果、既存業務との接続、人材、組織文化、データ品質など、PoCから本番へ進むためには多くの条件がある。

中編では、対談「日本のAI導入実情とDevRevの可能性」を通じて、PoCが目的化する構造と、組織としてAIを使う条件を掘り下げる。

後編では、RAG、ナレッジグラフ、マルチエージェント、権限管理、暗黙知の継承をテーマに、技術と現場の双方から本番活用の要件を考える。


主催:シンセシー株式会社
公式サイト:https://synthesy.co.jp/

※本レポートは当日の文字起こしをもとに構成しています。製品仕様、導入実績、性能、削減効果および将来計画に関する記述は、登壇者による当日の説明に基づいています。

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